2020.04.26 すべてはここから
婚礼の現場へ研修に出された。
外務員からしばらく離れられることはうれしかったが、
婚礼の現場では何をするのか全くその時の私には分からなかった。
婚礼の仕事とはたくさんあって、今でこそ舌を噛みそうなカタカナの仕事でかっこいいが、その当時は、誘致フロントだの、施行フロントだの言っていた。
結婚式の契約を獲得する仕事、獲得した契約者と内容を決めていく仕事。
契約を獲得するのも営業外務員の力が絶大であった。
営業外務員からの情報で誘致フロントは獲得に走り回っていた。
この会社では営業外務員に頭が上がらない。
契約が決まると、そのお客の担当がかわる。
すなわち施行フロントに担当がかわるのだ。
施行フロントと内容を決めていき、そして式当日を迎えるようになる。
研修は、各フロントとの同行からはじまった。
みんなお客は幸せであふれていた。みんな笑顔。本当に幸せそうだ。
こちらがしょうもないジョークを言っても笑ってくれた。
なんか腹が立った。
正直つまらない。
そっか自分はつまらない人間だった。
ひととおり同行の研修をこなし、実際結婚披露宴を手伝う研修に参加した。
「本日は誠におめでとうございます。本日こちらのテーブルを担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします・・・。」
研修だと思っていたのに、なぜかいきなりテーブルをひと島任されたのである。
マジか。
なんなくこなしてしまう自分。こんなにも器用だったか。
そういえばバスガイドもこなしていたような。
結婚式も無事に終わり、それと同時に私の婚礼の研修も終わった。
婚礼の研修で多くの幸せそうなカップルに会った。みんな幸せそうだった。
幸せな二人をもっと幸せにし、最高に演出する。
すばらしい仕事である。みんながあこがれる仕事である。
・・・。そう締めくくればよかった。
つまらない。つまらなかった。
婚礼の現場は自分には合わない。はっきりしていた。
また川のせせらぎを見ながら弁当を食べた。
犬がよってきた。あのときの犬だ。
次は葬祭の研修に行くように言われた。
今度はどんな日々が待ち構えているのだろう。
【5へ続く】