2020.04.27 すべてはここから
葬祭研修の初日。婚礼研修でつまらない思いをした自分は、何も期待せず斎場の扉を開いた。
まだその当時、葬祭事業といえばおじさまたちの仕事で、事務所にはおじさまたちとがほとんど、あとは若い女性が2名と、事務所の主のような女性がドカッといた。
おじさまたちよりすごい迫力だった。
皆に挨拶をすると、若い男性が葬祭の現場へ来るのは珍しいということもあり、いじられ放題いじられた。
最初は、外務員とはちがういじりに慣れなかったが、
このおじ様たちは実におもしろかった。
個性派で一人ひとりがおもしろい。
すぐに大好きになってしまった。
研修がはじまり、いろんなおじ様方につかせてもらった。
うんちくをずっと言っている人、冗談ばかり言っている人、
どうやって、ばれないようにサボるかばかり教えてくれる人、
全くしゃべらない人、足が短すぎる人。
みな楽しいおじさまたちであった。
しかし、葬儀の依頼が入るとみな別人になった。
顔つきが変わり、職人の顔になった。
一気に私にも緊張が走った。
私は同行させてもらい初めての現場。初めての遺体だった。
二十歳やそこらの私は遺体を見たことはもちろんなかった。
怖いという気持ちや、見たくないという気持ちは不思議となかった。
研修だからかといえばそうではなかった。好奇心に似た感情だった。
なんの抵抗もなく、なんの違和感もなく、遺体に触れることができた。
不思議な感情だった。
遺体は「死んでいる人」というより、「何もかもが抜けた人」というように見えた。
痛みも、つらさも、はがゆさも、くやしさも、苦しさも。
とても綺麗で神聖な人に感じた。
なんだこの感じ。
【6へ続く】