2020.04.30 すべてはここから
葬祭事業部に正式に配属が決まった。
新たな気分での初出勤。
朝礼ではみなニヤニヤしていた。
私もつられてニヤけてしまった。
本当にうれしかった。
私は研修のときに輪をかけたように走り回った。
どんなケースの依頼でも関わり、どんな些細なことでも質問し、資料も読みあさった。
遺体の変化、遺体の処置、仏教、キリスト教、神道、相続、保険、式場飾り、司会。
覚えることは山積みだった。
おじ様達は見て聞いて盗め、としか言わなかった。
何も教えてくれない。だから自分で努力をした。
楽しかった。自信もついた。
初めて担当をさせてもらった。私は緊張しながらも大丈夫、やれる。
そう思っていた。
喪主の方にご挨拶。
喪主の方からの一言。
「親父の大事な葬式に、俺より若いあんたで担当が勤まるの?」
悔しかった。でもしょうがなかった。
その当時は私のような若い担当者はいなかったからだ。
若いというだけで不安がられてしまった。
私は落ち込んでいた。するといつもは冗談ばかり言っているおじ様が、ポンっと肩を叩き、前を向け自信をもて、努力してるだろ。
救われた思いだった。
再びやる気スイッチが入った。
走り回る日々が過ぎていたある日、上司から呼び出された。
転勤だった。
考える余地はない。
落ち込んでいたときに元気と勇気をくれたおじ様が近づいてきた。
またポンっと肩を叩き、
「たっしゃでな」
この野郎。
私の送別会、やけ酒になったのは言うまでもない。
さっ、次の支店だ。
【9へ続く】