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すべてはここから(8)この野郎

2020.04.30 すべてはここから

葬祭事業部に正式に配属が決まった。

新たな気分での初出勤。

朝礼ではみなニヤニヤしていた。

私もつられてニヤけてしまった。

本当にうれしかった。

私は研修のときに輪をかけたように走り回った。

どんなケースの依頼でも関わり、どんな些細なことでも質問し、資料も読みあさった。

遺体の変化、遺体の処置、仏教、キリスト教、神道、相続、保険、式場飾り、司会。

覚えることは山積みだった。

おじ様達は見て聞いて盗め、としか言わなかった。

何も教えてくれない。だから自分で努力をした。

楽しかった。自信もついた。

初めて担当をさせてもらった。私は緊張しながらも大丈夫、やれる。

そう思っていた。

喪主の方にご挨拶。

喪主の方からの一言。

「親父の大事な葬式に、俺より若いあんたで担当が勤まるの?」

悔しかった。でもしょうがなかった。

その当時は私のような若い担当者はいなかったからだ。

若いというだけで不安がられてしまった。

私は落ち込んでいた。するといつもは冗談ばかり言っているおじ様が、ポンっと肩を叩き、前を向け自信をもて、努力してるだろ。

救われた思いだった。

再びやる気スイッチが入った。

走り回る日々が過ぎていたある日、上司から呼び出された。

転勤だった。

考える余地はない。

落ち込んでいたときに元気と勇気をくれたおじ様が近づいてきた。

またポンっと肩を叩き、

「たっしゃでな」

この野郎。

私の送別会、やけ酒になったのは言うまでもない。

さっ、次の支店だ。

【9へ続く】

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