メリット・デメリットを理解したところで、次は生前葬を成功させるためのポイントを解説したいと思います。
まだ生前葬になじみのない方も多いため、まずは、ご家族をはじめ周囲の方々の理解を得るところからはじめる必要があります。通常であれば亡くなってから行う葬儀を生前に行うというイレギュラーな事態に戸惑う方も少なくないため、「なぜ生前葬を行いたいのか」というご自身の希望をはっきりと伝え、納得してもらう必要があります。
ご家族には、自分の死後に行われる通常の葬儀についての希望も伝えておくとよいでしょう。たとえば「火葬式のみで済ませて、納骨堂に納骨して欲しい」「家族だけの小規模な家族葬にしてほしい」などのように具体的に伝えておくとご家族様が後々迷わずにすみます。
なぜ、生前葬なのかという目的の部分をまずは明確にし、その上で内容を検討しましょう。こんな式にしたいという内容が決まったら、葬儀社との打ち合わせを重ねて連携を深めておくことも大切です。内容の他には誰を招待するか、どこで開催するかなども具体的に決めておきましょう。
式中には、みなさんへ挨拶のスピーチをする時間を設けることができます。ご自身が生前葬を行うに至った経緯や背景、そして感謝の気持ちを伝える絶好の機会となりますので、気持ちのこもった挨拶文を考えておくとよいでしょう。
生前葬は無宗教で行うのが一般的です。通常の葬儀のように僧侶をお呼びする必要はなく、決められた形式も特にありません。そのため内容は人それぞれになりますが、一般的には以下のような流れで進行することが多いです。
一例として参考にしてください。
①開式の案内
司会者が開式の挨拶をします。
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②メモリアルムービーの上映
幼少期から現在に至るまでの人生を振り返る映像を流します。
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③本人挨拶
本人から、生前葬を行う理由や想い、参列者への感謝の気持ちなどを伝える挨拶を行います。
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④友人や家族、親族からの挨拶
親しい方々からの挨拶の場が設けられます。様々なエピソードを交えたスピーチとなるので、本人の知られざる一面を垣間見ることができる時間となります。
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⑤歓談・会食
料理をいただきながらの、歓談の場となります。本人が各席を回って、参列者と交流をします。
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⑥閉式の挨拶
司会者から、閉式の挨拶が行われ終了となります。
生前葬の本人挨拶で盛り込む内容は以下の通りです。
・参列へのお礼
・生前葬にした経緯と背景
・これまでの人生で関わってくれたみなさまへの感謝の気持ち
・式の流れと内容
生前葬の挨拶では堅苦しい挨拶はしないのがポイントです。
基本的には、参列いただいた方々への感謝の気持ちを伝え、これまでの思い出話を話すなど、その場が和やかな雰囲気になる内容にしましょう。
また、余命宣告を受けて生前葬を行うという方もいらっしゃると思いますが、どのような場合であってもできるだけポジティブな内容を心がけ、今生きていることの尊さを、会場にいる方々と共有できるような挨拶にするとよいでしょう。
本人挨拶の例文は以下の通りです。
【本人挨拶の例文】
本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
みなさまにおかれましては、生前葬と聞いてさぞかし驚かれたことと思います。今回私が生前葬を行うに至ったのは、元気なうちにみなさんに感謝の気持ちをお伝えしたかったからです。
こうして懐かしい方々がたくさん顔を揃えていただいて、本当に感無量です。
どうぞ、この式は私の第二の人生のスタートと考えていただいて、思う存分楽しんでいただければと思います。
この後、私の幼馴染である友人〇〇君、お世話になった上司〇〇さん、長男の〇〇の3名にスピーチをしていただき、その後は、ご歓談の時間とさせていただきます。会食の席では、これまで伝えてこれなかった「ありがとう」の気持ちを、お一人お一人にお伝えしたく、会場を回らせていただきます。ゆっくり思い出話に花を咲かせ、楽しい時間を共有しましょう。
本日は、このような会にご参列いただきまして誠にありがとうございます。そのため、事前に死後の葬儀についても葬儀社と話し合い、内容を決めておくことで、残されたご家族の負担を少しでも軽減することにつながります。生前葬にお金をかけて死後の葬儀の費用が足りないとなってしまわないためにも、先々のことも考えた予算配分を心がけましょう。
また葬儀とは、ご遺族の悲しみを癒すために行われるものでもあり、宗教的な供養の場でもあります。いくらご本人が簡素な葬儀を希望していてもご家族がきちんとした供養を希望されるケースも多いです。
生前葬を行う前に、死後の葬儀についても考え、決めた内容は必ずエンディングノートに書くか直接口頭で伝えるなど、ご家族に共有しておくことも大切です。