生前贈与のメリットは、贈与者が生きているうちに直接法定相続人と話し合い、贈与の内訳を決めることができる点にあります。またもし贈与したい人を選びたい場合には、遺言書を書いておく方法もありますが、法定相続人には最低限の金額が保証されているため、自分の思い通りに贈与をするためには、生前贈与の方が確実といえるでしょう。さらに相続人同士のトラブルを防ぐことにもつながります。
生前贈与にはメリットも多いですが、注意点も押さえておきましょう。
毎年110万円以下を贈与する暦年贈与のところでもお伝えしたように、税務署によって定期贈与や連年贈与とみなされてしまうと、贈与税が課せられることになります。そのようなことがないよう、「贈与の時期を変える」「贈与金額を変える」「口座は贈与を受ける人が管理する」という点を徹底しましょう。
生前贈与の場合でも、他の法定相続人から遺留分を請求される可能性があります。法定相続人によっては、最低限保証される遺産取得分があるので、もし生前贈与で3人の法定相続人のうち1人だけが贈与を受けていたといった場合に、他の2人の法定相続人から遺留分請求をされることがあります。
対策としては、可能な限り関係者に同意を得た上で生前贈与を行うことによって、このようなトラブルは避けることができます。
財産は現金だけに限りません。例えば、不動産の生前贈与を受けた場合、贈与税以外に不動産取得税や免許登録税、登記にかかる費用などが別途必要になることを覚えておきましょう。
前述したように、暦年贈与をしていて贈与者が亡くなった場合、令和6年1月1日以降は7年以内/それ以前は3年以内に贈与した財産は、相続財産となり相続税の課税対象になってしまいます。これは駆け込みでの生前贈与を防ぐ目的で設けられたルールです。
ただしこれについては例外もあり、相続や遺贈を受けない人に対する生前贈与は、7年または3年以内であっても相続税の課税対象にはなりません。また、住宅取得資金等の贈与の特例/教育資金の一括贈与の特例/結婚・子育て資金の一括贈与の特例/夫婦間贈与の特例といった場合においても課税対象にはなりません。
いかがでしたでしょうか。ここまで、贈与税の非課税枠を利用することで、節税につなげる方法をいくつかご紹介してきました。暦年贈与にするか相続時精算課税制度にするかは迷われるポイントかと思いますが、ご自身の状況を踏まえて、より多くの財産を残せる方法を選択していかれるとよいと思います。そのためには利用できる制度についてよく知り、生前贈与のメリットを存分に活かしていきましょう。